どーも!パンブロガー福介です ヾ(・_・;
今回は「トランス脂肪酸」について。
先週の週刊新潮さんの記事で
「食べてはいけないトランス脂肪酸入りパンワースト27」
というものがありました。
ご丁寧に「完全版」とまでありました。
ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
最近よく聞く「トランス脂肪酸」
聞くときは大体パンの話。
なんとなく体に悪いものなんだろうな、という認識の方が大半なんじゃないかなと思います。
一応、職業「パン屋」なので、ちょっとこの記事には言いたいことがありまして。
自分の理解している範囲でしか説明は出来ませんが、読んでいただけたら幸いです。
トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸は、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際や植物油を高温にして脱臭する工程で生じます。また、天然でも、牛などの反すう動物に由来する乳製品や肉に含まれています。
つまり脂肪酸の一種であり、天然でも存在しています。
簡単に言うとバターや牛乳、牛肉にも入ってますってことです。
人工的なものではありません。
もともと自然界にあるものです。
さらに「脂質」は人間が生きていく上で重要な栄養素の一つです。
炭水化物、たんぱく質、脂質が3大栄養素ですよね。
パンに大量に入っているのか?
トランス脂肪酸の話題はなぜかパン関連が多い気がします。
パンと呼べるものには一応定義がありまして。
「小麦粉、パン酵母、塩、水を使い、発酵をとり焼成したもの」
なんです。
入ってないじゃん!て話なんですが、この4つの原材料はパンを作る上での最低限の材料であって、この4つでパンを作るといわゆるフランスパンになります。
日本で製造され食べられているパンの多くには、上記の4つの原材料の他に「油脂」と呼ばれる物が入っています。
要は油ですね。固形油脂と呼んだ方がいいかもしれません。
マーガリン、バター、ショートニングなどが油脂にあたります。
マーガリンというと、パンに塗ってたべるものだという認識が一般的ですが、パン屋にとってはパン生地に練りこんだり、パン生地に織り込んだりするものなんですね。
そもそもバターの代用品としてフランスで開発されたものです。
またショートニングもあまりなじみがないかもしれません。
これはマーガリン同様人工的に、作られる油脂の1種で、無味無臭のマーガリンだと思っていただければよいと思います。
これらの油脂は食パンにも、アンパンにも、メロンパンにも、クロワッサンにも、コッペパンにも大体入ってます。
じゃあなんで油脂を入れているのか?
その方が美味しいからです。
製パンにおいて油脂の役割は、ボリュームアップ、食感の改善(歯切れ)、ソフト感の付与などがあります。
単純に先ほど出てきた油脂が入らないパンの代表のフランスパンと食パンとの食感の違いを想像していただければよいかと思います。
日本人は基本的にソフトな柔らかいフワッとした食感のパンを好む傾向があります。
食パンよりフランスパンが好きという方はあまりいないんじゃないかと思います。
そのため、日本で販売されているパンのほとんどのものには油脂が入っているわけですね。
ただ、入っているといっても粉対比5~8%くらいが相場です。(ペストリーであったり、ブリオッシュといった油脂がたくさん入っているのが特徴のパンは別ですが)
小麦粉1000gに対して50g~80gということですね。
パンには他の材料も使いますから、実際には生地が1000gあったら含まれている油脂は大体30g~50gくらい。
まして一つのパンの生地重量は60gくらいです。多くても100g。
つまりパン1個食べて体内に入ってくる油脂の量は多くて5gくらいです。
さらにこの5gすべてがトランス脂肪酸ではありませんよね。
トランス脂肪酸は脂質を構成している脂肪酸の1種です。
バターだったら天然のものですし、加工されている油脂の種類や加工の工程によって数値は変化しますので、はっきりとは言えませんがおおよそ油脂の数%がトランス脂肪酸です。油脂の重量の1/100単位での含有量です。
人体に対してどのような悪影響があるのか
現在分かっている範囲では、トランス脂肪酸は長期間の過剰摂取により血中の悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減少させることが指摘されていて、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増加する可能性が高いとされています。
また、肥満やアレルギー性疾患についても関連が認められていますが、糖尿病、がん、胆石、脳卒中、認知症などについての関連は分かっていません。
ただ前述したとおり、トランス脂肪酸は三大栄養素の脂質の構成成分ですから、人体に必要なものでもあります。
問題となるのは、トランス脂肪酸の過剰摂取ですね。
なんでこんなに騒がれているのか
アメリカでは以前から、トランス脂肪酸の過剰摂取が問題となっており、心筋梗塞などの原因として問題視されていました。
そしてついに2018年6月18日からトランス脂肪酸を含む油脂の使用が事実上禁止となりました。
つまり社会問題となり、騒いでいたのはアメリカであり、日本はそれに乗っかって騒いでいるわけです。
もちろん日本でもトランス脂肪酸の過剰摂取が原因で、心筋梗塞になった方もいらっしゃるでしょう。
ただ当たり前ですが、アメリカと日本では食生活、食文化が異なりますよね。
和食に油脂をふんだんに使用しているわけではありませんし、アメリカの食べ物と言われたらジャンクフードを連想される方が多いのではないでしょうか。
WHO (世界保健機関)は、心血管系疾患リスクを低減し、健康を増進するための勧告(目標)基準として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。
これはトランス脂肪酸の摂取量が総エネルギー摂取量の1%以下ならば問題ありませんということですよね。
きちんとデータも発表されていて、日本人の平均摂取量は0.31%です。
十分に下回っています。
対してアメリカ人の平均摂取量は1.2%。
上回ってしまっています。
つまり人体に悪影響を及ぼしやすい状況だということです。
そのためアメリカではトランス脂肪酸に制限を設けたわけです。
まとめ
いかがしょうか。
読んで頂けたら言葉足らずやわかりづらいところもあったかと思いますが、トランス脂肪酸に対して多少は理解していただけたのではないかと思います。
結局は、日本ではそんなに騒ぐことではない。問題なのは過剰摂取であってトランス脂肪酸自体が悪なわけではありません。
この話題が出る度に感じるのですが、塩分の過剰摂取は体に悪いです。糖分の摂り過ぎも体に悪いです。
でもこの二つとも人間が生きていく上で、絶対に必要なものですよね。
誰でも分かっていることです。
同じことなんですよね。
ただ「トランス脂肪酸」という横文字交じりの聞いたことがないものが問題になると急に、食べちゃダメだ!みたいな話になるのはおかしいですよね。
日本の原材料メーカーさんは非常に優秀です。
油脂メーカーさんも優秀です。
だいぶ前から各社がトランス脂肪酸削減の研究、開発をしています。
現在流通しているものは昔と比べると、だいぶ削減されているものがほとんどですし、さらなる削減を目指していく動きはずっと続いていくものだと考えられます。
以上です。長くなりましたが真面目なお話でした。
それではまた明日( ̄ー ̄)ノ
*引用部分は厚労省のHPからです