Breadroom    

~パン教室兼おうちパン作り研究室~

「乃が美」ショック

 

どーも!パンブロガー福介です ヾ(・_・; 

 

みなさんはもう召し上がりましたか?

「乃が美」さんの高級生食パン。

 

もうほんとにすごい勢いですよねー。

今では全国で111店舗を構えるそうですよ。

しかも全都道府県に展開し終わったらしいですね。

 

人気がすごすぎて獲得したタイトルもすごいです。

「パンオブザイヤー2016食パン部門金賞」「日本の美味しい食パン10本」「Yahoo検索大賞2017食品部門賞」「Yahoo検索大賞2018食品部門賞」などなど。

Yahoo検索大賞を2年連続って。

食品でこれは快挙ですし、恐ろしいですね。

 

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この手提げも色々なところで見かけますよねー。

消費期限は3日間なのでお土産や贈答品としても、選びやすいです。

「高級」感ありますし、食パンを食べない家庭ってあまりないでしょうから、喜ばれること間違いなし。

 

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2斤で一本です。

お値段は税込み¥864。

1斤でも買えるそうですが、店舗によるっぽいです。

1斤だと¥432 ですね。

スーパーやコンビニに行けば食パン1斤¥100くらいで買えますから、確かに高級です。

ただ百貨店や駅に入っているベーカリーだったり、街の有名店なんかだと食パン1斤を¥400くらいで販売しているお店もたくさんありますから、特別割高だとは個人的には思いません。

むしろ良心的なんじゃないかと思うくらい。

過去には一本¥3000の食パンなんてのもありましたしね。

 

 

 今回は、そんな「乃が美」さんの人気の考察と分析、そして同業者としての感想です。

 

①食パンブーム

 

もう業界として「食パンブームを起こそう」となって各社ががんばったんじゃないかって感じです。

スタートは、セブンイレブンの「金の食パン」の大ヒットです。

2013年発売のセブンプレミアム(セブンのPBですね)が素材、製法にこだわり高価格に設定した「金の食パン」が爆発的な大ヒットをしました。

 

 

そして、ほぼ同時期に「金の食パン」のようなホールセールではなくリテイルでも、日本一美味しいバゲットとして圧倒的な人気を得ていたビロンを運営する西川食品が、食パン専門店「セントルザベーカリー」 を銀座にオープン。

リテイルの店舗らしくカフェも併設して、こちらもとても話題になりました。

セントルのオープンも2013年でした。

(今年2018年には青山に2号店を出店)

 

 正直、業界の目というかよくきいた意見としては、

「食パン専門?だいじょぶ?」とか「価格が高すぎる」などの理由で成功しないんじゃないかというような感じでした。

ところが共に大成功。

食パンブームの礎をしっかり築いてくれました。

 

そして食パン専門店として「一本堂」「乃が美」などが全国に出店していった感じです。

ただ「乃が美」も創業は2013年なので時期はほぼみんな一緒なんですよね。

業界の中ではどうしても先に「セブンイレブン」「セントル」が世に出た感じなのでそんなイメージになってしまっていますが。

 

すごいな2013年。

 

 

②パンブーム

 

食パンブームの土台として、パンブームがありました。

今ではとてもメジャーなものになりましたが、各地で行われているパンイベント。

「パンのフェス」「パンマルシェ」「パン祭り」などなど。

スタートは2010年くらいなんですよね。

 

そして「国産小麦」の発達。

昔は日本ではパン作りに適さない小麦(タンパク質含有量が低い)しか生産できませんでした。

しかし、長年の研究、開発により、パン作りに適した小麦が作ることができるようになって、それが安定して流通し始めたのもちょうどこれくらいの時期です。

「ゆめちから」が有名ですね。

 

そんな背景も大きく影響していたんでしょうね。

 

 

③ストーリー性

 

 今では企業や生産者の想い、考えが商品の売り上げを左右する時代です。

商品自体のよしあしも大切ですが(パンだったら美味しい、美味しくない)、お店だったり企業自体のイメージも非常に大切されます。

パン業界でも各社のホームページを見ると、本当に色々なことが書いてありますよね。

 

そして、想いやイメージに直結して、時にはそれ以上に大切だと思われるものがストーリー性です。

「なぜその商品が誕生したのか」というストーリーがしっかりあるものほどよいんだろうなぁと思います。

もちろんどんな商品にもストーリーはあると思いますが、それがしっかりお客さんの心に届くかどうかというか。

話題性という点でも同じですよね。

 

「乃が美」の食パンは、社長の阪上さん(大阪プロレス協会?の会長さんらしいですね。「奇跡のパン」という本もカドカワから出版されてます)が、2年の月日を費やして、研究と試行錯誤を続けて「高級生食パン」を誕生させたそうです。

もともと色々な飲食店を経営されていて、「パン屋」ではなかったんですね。

 

専門外の「パン」を扱おうと考えたきっかけが、ご年配の方の「みみまで柔らかい食パンが食べたい」という声と卵アレルギーのお子さんがパサパサの硬そうなパンを食べている姿を見たことだそうです。

「みみまで柔らかい、卵を使わないでしっとりふわふわな食パンを作ろう」と一念発起して今に至るということみたいです。

そしてそんな食パンをたくさんの方に食べてもらおうと全国で販売されてます。

 

ストーリーありますよね。

 

 

④高級生食パン

 

高級「生」食パンは商標登録はすでにされています。

ネーミングもセンスがあります。

分かりやすいですよね。

「生」チョコが流行ったことがありますが(今も人気ですかね)商品へのイメージがしやすいです。

しっとり感も柔らかさも想像できる言葉です。

 

これ、もしパン職人だったらこのネーミングはしないと思うんですよね。

「生」というと「生焼け」「クラムがベチャベチャ」「火通りがいまいち」みたいなマイナスなイメージが先に来てしまうので。

 

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商品の特徴は、すでに書いている通りです。

あとは甘味が非常に強い食パンですね。

 

 

⑤同業者としての感想

 

ここからはあまりよろしくないことを書いていきますので「乃が美」ファンの方は読まないでくださいね、ほんとに。

 

これだけの成功を収めている「乃が美」さんはリスペクトしてます。

ほんとに。

 

ただこの商品がこれだけ人気になったのは正直、腑に落ちないというか納得できない面もあるんですよね。

 

まず「食パン」とは「食事用パン」の略称なので食事として食べるパンを想定して作っています。。

スクランブルエッグや、ハム、ソーセージみたいなおかず系と一緒にたべるものです。

そしてサンドイッチにしたり、フレンチトースト作ってみたり。

あくまで食パンは食事シーンではわき役なんですよね。

 

でも「乃が美」の食パンは甘味が非常に強く、あまりこういう食べ方には向いていません。

食シーンも食事ではなく、おやつとか間食用といいますか。

つまり主役として食べるものだと考えられて作られています。

お店も「そのまま食べてね」みたいな食べ方を推してますし。

 

次に、製造関連の話です。

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原材料表記から原材料は、小麦粉、乳等を主要原料とする食品、砂糖、マーガリン、バター、はちみつ、食塩、パン酵母 ということが分かります。

 

原材料表記の表示方法は、たくさん使っている材料から記載するので最も使用料が多いのが小麦粉ということになります。(当たり前ですね)

水は表示義務はありません(これも当たり前ですね)

 

そしてその次に使用料が多いのが「乳等を主要原料とする食品」です。

これは何なんだということですが、「乃が美」さんのHPを見る限り「生クリーム」のことです。

「乳製品」としてクリームの規格は定められていて、「乳脂肪分18%以上で添加物を使用していなくて酸度が0.20%以下で細菌数が1mlあたり10万以下である。」

それ以外の「クリーム」は全て「乳等を主要原料とする食品」と表示されます。

乳脂肪分が18%未満で添加物を使用しているものということになります。

 

そして実際に食べてみて、材料から考察すると大体の配合が想像がつきます。(ほんとに大体です。同じもの作れと言われても無理ですが)

配合の特徴としては、生クリームの配合量が多いリッチな配合の食パン生地です。

甘味が強いので砂糖の配合量もたかめなのかなぁとか。

はちみつが効いているなぁとか。

パン酵母が食塩より少ないので、耐糖性のあるサフのインスタントドライイーストのゴールドを使ってるのかなぁとか。

 

要はめちゃくちゃ個性がある配合ではないんです。

似たような配合で作ってらっしゃるパン屋さんはたくさんあると思います。

 

じゃあ製法がすごいのかというと、おそらくそんなことはなくて。

製法でいったら、ストレート法か中種法のどちらかでしょうし(加糖中種もあるかな)

製造工程で特徴がある部分はおそらく焼成ですね。

温度帯が通常の食パンの焼成温度より低めで、焼成時間が短めなんだろうなぁ。

ただこの焼成方法もヤマザキさんの「ダブルソフト」に近い感じだと思われます。

 

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「みみまで柔らかい」パンを作るためには、焼成時間をできる限り短くするということが必須です。

焼成時間の長さでクラスト(パンの皮の部分)の厚さが変わるからです。

クラストは確かに薄めで柔らかそうな感じですよね。

 

 

結局、何が言いたいかというと、製法も商品もめちゃくちゃ特徴があって美味しいわけではなく、お客さんのニーズを的確に把握して、それに合致する的確な商品を開発して、「食パン専門店」という新しい業態で売り込んでいくというスタイルを考えた「乃が美」すげー!ってはなしですね。

 

パン業界においてこれはほんとに「乃が美ショック」なんです。

パン職人では絶対に考え付かなかったことだと思うんですよね。

ネーミングも商品も販売形態も。

「乃が美」の食パンい近い、似たような食パンを作れる職人さんはたくさんいると思いますが、それ一本で勝負しようと思える職人さんはほぼ0でしょう。

「このパンが売れる!」と思えるパン職人も少ないはず。

 

「甘いだけの食パン」「ちょっと生っぽい」「パンの風味が弱い」という意見がパン業界では多かったのがいい証拠です。

 

さらに突っ込むと、パン業界の人達が売れると考えているパンと、実際にパンを買うお客さん達が求めているパンとの乖離もうかがえるということですよね。

「しっとり」「もちもち」「やわらか」というキーワードが売り上げに直結することが分かっていてもそこまで、つきつめられない作り手側の怠慢というか、迷いがあるように思います。

 

パン職人が美味しいと感じる「食感」「風味」はある意味「しっとり」「もちもち」「やわらか」と反対側にあるもののような気もします。

 

そもそもパンとは欧米から日本に入ってきたもので「本格的なパンは美味しい」と刷り込まれているだけなのかもしれません。

日本人と欧米の人では、唾液の分泌量が違うという体質の差や気候の違い(温度や湿度)もあるわけで、同じものを食べても感じ方はだいぶ違うはずなんですよね。

 

今も絶好調の「乃が美」さん。

浮き沈みが激しい、ブームのサイクルも早い飲食業界でこれからどうなっていくかは分かりませんが、パン業界に与えた衝撃は本当に大きかったと思います。

 

それではー ♪( ̄▽ ̄)ノ"

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